Rock-Paper-Scissors

Antibiotic-mediated antagonism leads to a bacterial game of rock-paper-scissors in vivo
http://www.nature.com/cgi-taf/DynaPage.taf?file=/nature/journal/v428/n6981/abs/nature02429_fs.html

2本目。大腸菌の中には、コリシンという毒素を産生する株が存在し、周囲の大腸菌(感受性株)を殺してしまう。そのため毒素産生株と感受性株は共存できないのですが、自然界では同じ宿主の中に、コリシンに耐性を持つ耐性株が存在していて、この三種類の大腸菌がにらみ合いをして共存しています。
今回の報告は、この三種類の株を実際にマウスに感染させて、このにらみあいを再構成することに成功したというものです。その結果、毒素産生株は感受性株に勝ち、耐性株は毒素産生株に勝ち、感受性株は耐性株に勝つ、というじゃんけんゲームが成立していて、平衡状態が形成されていることが分かりました。つまり、他の株を殺すような強力な毒素の出現が、逆に株の多様性を生み出していることが明らかとなったのです。

このにらみ合いの構図をシュミレーションでなく実験系で確認したことが重要らしいのですが、そんなことよりも多様性を生み出すシステムがめちゃくちゃ面白い。
要するに、昔は1種類の株しかいなかった。そしてある時、とんでもない兵器を手に入れた変異体が出現したわけです。すると、変異体が周りを皆殺しにしてしまうような気がするわけですが、自然界はうまく出来ていて耐性を持つ株を生み出すわけです。これで毒性産生株が淘汰されるかというと、実は耐性株は感受性株より弱いので毒性産生株の存在なくしては自らも存在できないわけで、共存の道を選びます。
こうして世界は、そのバランスを崩壊させかねない兵器の存在さえも包み込み、「許す」わけです。私たちも見習わなければなりません。