理化学研究所でまたデータ改竄


改ざんしたのは、副主任と5年契約の若手研究者の2人。血小板が作られる仕組みの一端を解明したとして、米科学誌「GENES&DEVELOPMENT」(03年12月1日号)などに論文を発表した。この中で、遺伝子の解析データの図をコンピューター処理で改変したり、論文に掲載していない実験材料を使ったりして、データの一部を都合のいいように変えていたという。
ニュースを見たときは、以前言及したニュース(こちら)の続報かと思いましたが、調べてみると別件でした。今回の事件については、理化学研究所も公表しています。

調査委員会が調査した結果、疑惑の指摘があった論文3編について確認された事実は、次のとおりである。
(1) Gene & Development, (2003)について
論文に掲載された4つの図のうち2つの図について改竄が認められた。
論文記載内容とは異なる実験材料の使用が認められた。
なお、本論文における上記2名以外の著者については、実験材料の提供等を行うことで研究に協力した者であり、不正には係わっていないことが確認された。
(2) J. Cell Biology, (1999)について
論文の一部実験データに改竄が認められた。
(3) 1998年に発表された他の1篇の研究論文について
論文の一部実験データに改竄が行われた可能性が極めて高いことが確認された。
今回の改竄されたデータは統計学的なデータの取り扱いのレベルではなく、どうやらfigureの意図的な改変のようであるため、悪質と言われても仕方がありません。
科学者のデータの取り扱いについては、以前に述べた通りなので言及いたしませんが、ウェスタンブロットをCCDカメラで取り込んでPhotosopで加工していると、「これはどうにでも改変できてしまうな」ということを実感します。一昔前は、ウェスタンブロットはデジタルデータでは受け入れず、現像したフィルムしかダメという雑誌もあったと聞きます。けれどもバイオインフォーマティクス全盛となり、あらゆる形式のデジタルデータが氾濫するようになった現在では規制すること自体が不可能であり、いまや研究者個人の良心を信じるしかないのでしょう。
実際に、深夜にしかデータの再現ができない研究者や、追試のできない論文は確かに存在します。科学は検証可能な学問であるはずですが、追試のできない論文に対するペナルティというのは、無いにも等しいです。被引用数は信用性のひとつの目安になりますが、被引用数が少ないからといって批判の対象にはできません。その研究分野の限定したコミュニティの中では不信感は口コミで広がるのですが、コミュニティ外の人間にはその論文が信用に値するかは結局自らの手で追試しなければ分かりません。
そういう意味でも、発表された論文について追試の報告や批判がもっとオープンかつ気軽にできるようなシステムがあれば良いのではないでしょうか。これは紙媒体であった従来の学術雑誌では「コメント」という形でしか掲載できませんでしたが、オンラインの雑誌媒体ならば掲載した論文ごとに広くコメントを受け付けるのもひとつの方法なのではないでしょうか。