マイクログリアが食べる?

アルツハイマー病の画期的な治療法として抗体療法が注目されている。これはアルツハイマー病患者の脳内に蓄積するアミロイドベータ蛋白質を、患者にワクチンとして注射することで、患者の体内にアミロイドベータを認識する抗体を作らせて、免疫力によって脳内のアミロイドベータを取り除く方法だ。
既にElan社が治験を始めていたのだが、一昨年に治験中の患者が脳炎を発症し死亡したため治験を中止している。しかし、脳炎を発症した患者の脳内のアミロイドベータが消失していたことが報告され、免疫療法の効果が示された。

今回の報道は、東京都精神医学総合研究所の秋山研究員らが、アルツハイマー病患者で不完全な脳虚血を起こした患者において、虚血が起きた部位に限局してアミロイドベータが消失していることを、コレスポンデンスとして報告したものだ。
彼らは虚血により脳内に侵入したマイクログリアがアミロイドベータを「食べた」のではないかと推測している。そして抗体療法の効果が、活性化されたマイクログリアが脳内のアミロイドベータを「食べる」ことで生じているのではないかと提唱している。

今回の報告は、これまでも推測されているマイクログリアの関与について新しいデータを提示しているが、虚血において見られた現象を抗体療法の作用機序と結び付けるには、いま少し慎重にデータを積み上げる必要がある。
 抗体療法は夢の治療法であるかもしれないが、その作用機序はほとんど分かっていないのであり、早急なヒトへの適用は大きなリスクを抱えている。

アルツハイマー病の原因物質、「掃除屋」細胞が除去(朝日新聞
http://www.asahi.com/science/update/0202/001.html

人間の脳内にアルツハイマーの原因物質除去する仕組み(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20040202i401.htm